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研究室紹介

健康長寿社会に貢献するバイオ化学工学
-機能材料設計・有機合成から再生医療まで-

田中賢(Masaru Tanaka)

田中賢教授(Masaru Tanaka)


「人々を幸せにするためのヘルスケア材料、基礎・理論から製品化まで。」


高齢社会を迎え、健康長寿社会世界一を目指す我が国では、病気の予防、診断、治療などの先進医療を支える製品開発が求められています。医療製品は多くの材料からできています。生体接触面において異物反応の少ない材料が必要です。


(1)新規医療材料の設計と合成

血液に接触しても凝固が起こらない、安全性の高い新材料の合成を行いました。
研究室で発見した材料が世界シェア第1位の医療製品の開発に結び付いています。

(2)バイオ界面現象の本質の解明

細胞が材料に接着するときの接触面を直接観察できる装置を作製しています。細胞の接着機構を解明することで、新しい医療材料の設計指針を明らかにすることを目指しています。

(3)癌の診断・再生医療技術の開発

死亡原因のワースト1である癌の早期診断・治療技術の開発を行っています。抗癌剤を使用せずに、癌細胞と正常細胞、幹細胞の接着と機能を制御できる材料を合成しました。企業と製品化へ向けた開発を進めています。

(4)産学官医工連携による研究体制

今後、優れた製品開発を行うためには、分野融合が不可欠です。医学部や理学部との連携、他分野の研究者との交流を進めています。国際交流も盛んに行っています。


(以下、研究室インタビュー記事)

医療機器メーカー勤務で高機能医療材料の必要性を実感

 大学院修了後、医療機器メーカーに勤務した経験をもつ田中先生は、製品開発のため研究所と工場を行き来する毎日だった。営業マンと一緒に病院を訪れる機会も多く、病気で困っている患者さんや安全性の高い医療材料がないばかりに、最適な治療ができずに歯がゆい思いをしているお医者さんの姿を目の当たりにしてきた。高齢化社会を迎え、健康と命を守るバイオ・医療製品の開発がますます必要になってくると感じた田中先生は、母校である北海道大学の研究室に助手として戻り、その後も東北大学やドイツの研究所等、環境を変えながらも研究に励み続けた。そして、バイオ化学工学科の新設に合わせて本学への着任となった。
 これまでに人工血管や心臓手術の際に心臓と肺の役割を果たす人工心肺、胆管がんの治療に用いられる医療製品等を手掛けてきた。人間の身体は実に精巧にできているが故に体内に人工血管等が移植されると異物反応を起こし、血液が凝固し、血栓ができてしまう。そのため異物反応を抑える生体材料の開発が急務となっていた。その研究の過程で発見した「中間水」の新機能の中には、がん細胞や再生医療に不可欠な幹細胞を血液中から選択的に抽出するといった機能もあり、日本人の3大死因である「がん、心疾患、脳血管疾患」のすべてに関係する研究に取り組んでいくことになった。今回、最先端・次世代研究開発支援プログラムに採択されたことからも、その重要性、期待の大きさを窺い知ることができる。

※将来世界をリードすることが期待される潜在的可能性を持った研究者に対する研究支援を目的として「最先端・次世代研究開発支援プログラム(Funding Program for NEXT Generation World-Leading Researchers; NEXT)」を実施してきた。

人工血管の凝固を防ぐ等、「中間水」の新機能を発見

 人工血管内の血液の凝固を防ぐ材料を研究していた田中先生は、血液中の水分子が内壁をコーティングする材料に吸着する点に着目。血栓ができにくい材料には共通して「中間水」が存在していることを解明した。中間水とは、水が特定の高分子と混ざった時に出現する特殊な水で、その存在は以前から知られていたが、そうした機能については新発見だった。中間水の研究が進めば、生体が異物として認識しない、体にやさしい素材(生体親和性材料)の開発が飛躍的に前進する可能性もある。細い血管ほど血液が詰まりやすく、今まで達成できなかった内径が細い人工血管や副作用のないがん治療技術の開発も期待できる。
 さらに、材料の「中間水」量をコントロールすることでがん細胞や幹細胞を選択的に吸着させられることがわかり、これらの細胞を血中より採取する技術を開発することで病気の診断や患者さん一人一人に適した治療方法の選択、再生医療への応用も考えられる。
 また、田中先生は材料の形状に着目したプロジェクトにも取り組んできた。小さな穴がハチの巣状に規則正しく並ぶ高分子膜「ハニカム膜」が正常な細胞の増殖を促進する一方でがん細胞の増殖を抑えるという不思議な性質を持っているように、同じ材料でも形状を工夫することによって生体の反応が変わることの解明にも努めている。

活躍の場広がるバイオ化学分野 学部間連携にも大きな可能性

 田中先生の研究室では、現在、材料合成から細胞培養までを専門とするスタッフと学生が研究に参加している。材料と細胞の相互作用を解明するためには膨大なデータを必要とするため、分子レベルや細胞レベルでの実験を根気強く進めている。工学部に軸足を置いて医療やバイオを学ぶことは社会ニーズにかなっており、さまざまな企業から材料(工学)と生体のことがわかる学生を採用したいとの要望があるという。しかも、それは医療業界に限ったことではなく、電機、情報通信、食品、化粧品、化学メーカー等、幅広い分野で生体と材料の接点に関する関心が高まっており、行政等も含めてここで学んだ事を生かせるフィールドはますます広がりを見せている。
 8つの学科を有し、細胞や材料の加工、情報処理等、多彩な分野の専門家が揃う工学部。田中先生の研究室ではすでに他学科、国内外の研究室とのさまざまな共同研究を始めている。総合大学ならではのスケールを利用した国際共同研究開発を展開している。
胆管がん治療用のステント(管腔内部を広げる医療器具)

胆管がん治療用のステント(管腔内部を広げる医療器具)。正常な細胞の増殖を促進する一方、で、がん細胞の増殖を抑えるハニカム膜でカバーされている。

高分子材料を素材として作られた人工血管

高分子材料を素材として作られた人工血管。内径数センチにも及ぶ太い血管は心臓周辺に使用されるもの。需要の高い内径4ミリ以下の人工血管は今のところ実現に至っていない。

細胞-材料間の接着界面を高感度観察する3次元顕微鏡

細胞-材料間の接着界面を高感度観察する3次元顕微鏡

心臓手術の際に一時的に心臓と肺の代行をする人工心肺装置。

心臓手術の際に一時的に心臓と肺の代行をする人工心肺装置。血液の凝固を防ぐ、より優れた生体親和性材料の開発によるさらなる改良が求められている。


山形大学広報誌「みどり樹」第50号(2011年冬号) より転用
http://www.yamagata-u.ac.jp/jpn/yu/modules/university1/index.php?id=9


フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用

フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用(1)
フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用1

フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用(2)
フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用2

フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用(3)
フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用3

フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用(4)
フロンティアバイオ材料のヘルスケアへの応用4

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進化し続ける それが山形大学。 最先端・次世代研究開発支援プログラム
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